過去の事例をいくつかご紹介いたします。
特許、商標などの知的財産権については、一般的な常識とは違うと感ずることも多く、不明なことは専門家である弁理士にご相談ください。

事例1:


 
 
A商店が「バッグ」に「とまと」という名前をつけて販売していたところ、B社から商標権侵害として警告を受けた。A商店の経営者は、「とまと」なんて誰でも使う名前なのに商標権侵害になるはずはない。」と考えた。
(商標、商品は、架空のものです。)
 

事例1の答え:


 
商品「バッグ」について商標「とまと」
 
→B社の取り扱うバッグを他社のものと区別できる。
→他社の商標権の範囲でなければ登録され得る。

 
以上の理由から、商標権侵害の可能性があります。
商標権の権利は一般的な考え方では難しい事案が発生する場合があります。このような場合は専門の弁理士へお気軽にご相談ください。

事例2:


 
 
C社は、自社の商品に商標を付けて販売をしていた。C社がその商標について特許庁に商標登録出願したところ、拒絶査定になった。そこで、C社は、その商標の使用を中止することにした。
 
(商標、商品は、架空のものです。)
 

事例2の答え:


 
拒絶の理由を検討しましょう。
他社の商品と区別できない(識別力を有しない)という理由

→このまま使用しても問題ない。
→使用を中止する必要はない。
 
他社の商標権の範囲であるという理由
→使用をすると商標権侵害となる。
→使用を中止すべきである。

 
他社の商標権を侵害することが判明してから自社の商標を変更することは、ラベルの廃棄等だけではなく、商品の売れ行きの低下を招くなど損失が大きくなります。商品に商標(名前)を付けて販売するなら、商標登録を受けておきましょう。
その名前が使えるのかどうか、判断には細かい規定があります。お気軽にご相談ください。

事例3:


 
 
C社は、自社でデザインした商品を10年以上に亘って販売をしていた。ある日突然、意匠権を有しているというD社から、意匠権侵害であるとして警告を受けた。意匠権の内容を調査すると確かにC社の商品は、D社の意匠権の範囲に当てはまるものであった。
 
しかし、D社の意匠権の出願日を確認したところ、6月前に出願したものであり、10年以上前から販売しているC社としては先使用権を主張でき、そのまま販売を継続しても問題ないことが判明した。
 
この事案は、D社が、C社の商品が意匠登録されていないことを知って出願をして、意匠権を取得して、警告をしてきたものと推測される。その警告状には、商品の売上に応じた実施料を払えば販売を許可してもよい旨の記載もあった。悪意のある意匠登録の例といえる。
 
(商標、商品は、架空のものです。)
 

事例3の答え:


 
このように、意匠登録されていないことを利用してお金を騙し盗ろうとする手口も増えてきています。少しでも怪しいと思ったり、そのお金を本当に払う必要があるのかよく考えてみてください。権利の問題で判断が難しかったり、わからないことがあればすぐにご相談ください。

事例4:


 
 
E社は、独自にデザインした図柄Xのラベルを商品に貼付して販売していた。ある日、F社から著作権侵害であるとして警告を受けた。警告状によると、E社の商品の図柄YがF社の著作者が描いた図柄とアイデアが似ているという内容であった。E社は、図柄Xは、図柄Yを全く知らないで作成したものであった。
 
(商標、商品は、架空のものです。)
 

事例4の答え:


 
他人の著作物を知らないで作成した場合には、著作権侵害にはなりません。E社は、F社に対して、依拠性を有しない旨の回答をすることで対応しました。以下の判例が有名です。
 

高裁判例「ワンレイニ―ナイトイントーキョー事件」
「既存の著作物と同一性のある作品が作成されても、それが既存の著作物に依拠して再製されたものでないときは、その複製をしたことにはあたらず、著作権侵害の問題を生ずる余地はないところ、既存の著作物に接する機会がなく、従つて、その存在、内容を知らなかつた者は、これを知らなかつたことにつき過失があると否とにかかわらず、既存の著作物に依拠した作品を再製するに由ないものであるから、既存の著作物と同一性のある作品を作成しても、これにより著作権侵害の責に任じなければならないものではない。」

 お気軽にお問い合わせください。